NPO法人現代の教育問題研究所では、本年度も「第五回近江の子ども俳句教室(投句部門)」を開催し、前回までと同様に全国から多数の応募をいただきました。
応募してくだった皆さま、素晴らしい作品の数々、感動の俳句をありがとうございました!
その結果について次のとおり、お知らせいたします。
なお、入選作品等の詳細につきましては、ホームページをご覧ください。
【大賞作品 】 15句
滋賀県知事賞 滋賀県草津市立志津小学校 5年
お正月 あの弟も 行ぎよく 竹内 勇樹
【選評】吉永 幸司(理事長・京都女子大学附属小学副校長)
「勇樹さんは、弟さんが大好きであり、兄弟の仲が良いということがよくわかる俳句です。とくにそのことにつながる言葉は書いていません。しかし、句を読んでいると、そのことがよく分かるのです。それは、「あの弟」でなく「あの弟も」と書いているからです。いつもの家族の様子を見習って、弟さんも行儀よくしていたのでしょう。「お正月」からいろいろな様子が思い浮かぶ季語と「あの弟」との「あの」という言葉が作品をひきしめています。
大津市長賞 埼玉県春日部市立武里西小学校 6年
うろこ雲 隣町まで 続いてる 金子 大河
【選評】三上 昌男(元近江八幡市立金田小学校長)
とてもよく晴れた秋の空に現れるうろこ雲。秋らしい空だなあと感じます。魚のうろこのように、小さな白い雲のかたまりが空一面に広がり、隣町まで続いている様子を発見した大河さんは、晴れ晴れとした気持ちになって秋の空を眺めていたのではないでしょうか。素直な気持ちを言葉にした大河さんの俳句を読んだ人も、一緒に空を見上げているようなゆったりとした気分になります。自然の雄大さを感じる素晴らしい作品です。
草津市長賞 京都女子大学附属小学校 1年
あおいそら どんぐりいっぱい おちてこい 相木 啓
【選評】山田 定子(野洲市立北野小学校)
青い空にそびえるどんぐりの木。きっとたくさんのどんぐりができていることでしょうね。けいさんは、どんぐりを使って、いろいろなおもちゃ(どんぐりごまややじろべえなど)やかざり、ゲームもしてみたいなと思っているのでしょう。友だちといっしょにどんぐりで遊んでみたいと思っているけいさんの気持ちが伝わってきます。けいさん、どんぐりがおちてきたら、友だちといっぱいひろってくださいね。
滋賀県教育長賞 滋賀県長浜市立虎姫学園 4年
冬休みひ とりぼっちの ランドセル 山口 莉央
【選評】北島 雅晴(野洲市立北野小学校)
毎日、ランドセルを背負って元気に登校した二学期。でも今は、ランドセルは部屋のかたすみでひっそりとすごしていることでしょう。学校で元気にすごす莉央さんのすがたと、静かな冬休みとを対比させてあらわしたすばらしい作品です。ランドセルを大切にしている莉央さんの思いも伝わってきます。しばらく休んだランドセルを背負って、三学期もすばらしい学校生活をおくってくださいね。
大津市教育長賞 京都女子大学附属小学校 4年
とびばこで いわしぐもまで ひとっとび 沼波 明希
【選評】高野 靖人(NPO法人現代の教育問題研究所理事)
いわし雲は、秋のさわやかな雲ですね。体育館での、とび箱。勢いよく走り、とび箱に両手をしっかりついて、体をうかせ、マットに着地する。友達とはげましあって、みんなで練習をする。明希さんは、その勢いのさまを、体育館をこえ、空のいわし雲までとどくように感じたのですね。「ひとっとび」という終わりの5音で、きっぱりとした俳句の勢いが感じられました。俳句に、よいリズムが生まれ、まとまりもよくなりました。
草津市教育長賞 京都女子大学附属小学校 3年
原っぱで ごろんとねると いわし雲 川畑 まい
【選評】少徳 信(彦根市立高宮小学校)
秋晴れのもと、原っぱに寝転がる気持ちよさが一番に伝わってきました。きっと、まいさんはとても幸せな気分で寝転がっていたのでしょう。いわし雲が広がる空の豊かな光や、原っぱを包むやわらかな風が、この一句からあふれ出してくるようです。感じたことを素直に表現できるまいさんだからこそ、読み手もまいさんと同じように幸せな気分になるのでしょう。これからも、感じたままに俳句を詠んでほしいなと思います。
草津俳句連盟会長賞 滋賀県大津市立膳所小学校 2年
ピアノをね ひいてるぼくは 若葉晴れ 岡本 圭史
【選評】好光 幹雄(実行委員長・大津市立膳所小学校)
圭史さんは、ピアノを弾くのが好きなのですね。初夏の生命感あふれる若葉のころに、大好きな曲をうきうきした気分で弾いている様子が、ありあありと伝わってきます。ショパンでしょうか、モーツアルトでしょうか。「ひいてるぼくは若葉晴れ」と、「若葉晴れ」という季語を持ってきたところに圭史さんの詩的なセンスが輝いています。まだ2年生なのに、よく「若葉晴れ」という季語を知っていましたね。私も圭史さんのピアノを聴いてみたくなりました。
朝日新聞大津総局長賞 京都府京都女子大学附属小学校 2年
さつまいも ほくほくおかわり あと二本 宮村 柚希
【選評】森 邦博(副理事長・京都女子大学非常勤講師)
「さつまいもほくほく」と読みながら、「きっとやきいものことだな」と思いました。また、「ほくほく」からは、できたてのおいしそうなやきいもが見えてくるようです。ゆずきさんはことばの続け方がうまい!と感心しました。続く、「ほくほくおかわりあと二本」もリズムよく、ゆずきさんの、にっこりえ顔の大きな声が聞こえてくるようです。明るくてリズムのよい楽しい句になっていて素晴らしいです。
毎日新聞大津市局長賞 京都女子大学附属小学校 6年
帰り道 夕日の紅さ 彼岸花 飯島 彩日
【選評】北島 雅晴(野洲市立北野小学校)
夕日、紅、そして彼岸花。作品全体から赤いイメージが広がってきます。どこからの帰り道でしょうか。美しい紅に包まれている彩日さんの様子がうかんできます。今日一日がんばったぞという思い、明日もがんばろうという思いを感じ取ることができました。美しい風景をとらえることができる彩日さんの感性がひかる作品です。彼岸花のような情熱と、夕日のようなあたたかな思いをこれからも大切にしてください。
産経新聞社賞 埼玉県春日部市立武里西小学校 6年
柿実る 幾日寝れば 熟すかな 鶴岡 幸太
【選評】蜂屋 正雄(野洲市立北野小学校)
スーパーで見る柿ではなく、自分で大切に育て、実らせた柿はひときわおいしいに違いありませんね。無事味わうことができたのでしょうか。「幾日寝れば」とあるように、毎日楽しみに見守っている様子がほのぼのと伝わってきます。柿は熟すと鳥との競争になったり、収穫した日で味も変わったりします。熟すのを待つ間に気づく「自然」がたくさんあったのではないでしょうか。幸太さんの待つ姿と周りの自然の様子に想像が広がる大変魅力的な句です。
読売新聞大津支局長賞 和歌山県有田川町立鳥屋城小学校 6年
炎天下 放つシュート ネットゆらす 東 奏真
【選評】三上 昌男(元近江八幡市立金田小学校長)
「炎天下」は、太陽の日差しが強く、焼け付くような真夏の空を表す季語です。炎天下でのサッカーの練習中なのか、試合中なのか。奏真さん自身なのか、他の選手なのか。力を込めて蹴ったボールが、ゴールネットを揺らしたのでしょう。暑さを吹き飛ばすように、思わず「ゴール!」と叫びたくなります。「放つシュート」という言葉が力強く鋭い感じを表し、「ネットゆらす」がゴールした喜びを伝え、ゴールシーンを見事に表現できました。
中日新聞社賞 滋賀県野洲市立北野小学校 3年
ざくろの実 かたまってるぞ なかよしだ 上原 璃仁
【選評】森 邦博(副理事長・京都女子大学非常勤講師)
ザクロは、つゆのころ明るいオレンジ色の花をつけ、秋の初めにまるい実をつけます。その実はじゅくすとわれて、赤いゼリーにつつまれたたくさんの種が顔を出します。璃仁さんは、ザクロを手にしたとき、種がびっしりつまっている様子が、クラスの友だちが集まっているのとそっくりだと発見したのですね。「~ぞ」、「~だ」と強い調子の言葉を重ねているところからも発見のうれしさが伝わって来る句になりました。
えふえむ草津賞 滋賀県彦根市立河瀬小学校 4年
にいちゃんと さんぽですすき 見つけたよ 小林 碧葉
【選評】少徳 信(彦根市立高宮小学校)
散歩をしているときに、道ばたのすすきを見つけたのでしょう。上五の「にいちゃん」から、兄弟で仲良く散歩をしながら話したり笑ったりする姿が浮かんできます。きっと、大好きなお兄さんなのでしょう。お兄さんを大切に思う碧葉さんの優しい心が、やわらかく輝くすすきを通して豊かに伝わってきます。句をひらがなで書いたことで、すすきを見つけたときのおだやかな時間や様子がやわらかく感じられる一句に仕上がりました。
エフエム滋賀賞 大阪府吹田市立千里第三小学校 5年
まだ粘る 新米のくせに 超頑固 鶴田 淳悟
【選評】畑中 翔太(大津市立田上小学校)
淳悟さんは学校でお米について学ばれたのでしょうか。刈り取られた新米について書かれており、新米という季語から晩秋の清涼感を感じ取ることができます。新米を食べた時の粘り気が頑固に続いていることを、「くせに」という言葉で新米を擬人化し、ユーモアに表現できています。また、新米という言葉には、「経験の少ない人・新人」という意味があることから、「新人のくせに粘り強く頑固だな」という掛け言葉を取り入れたところに、淳悟さんの言葉のセンスが光ります。
FMおおつ賞 京都女子大学附属小学校 5年
秋が来て 余計なお世話 「上着着て」 上田 和輝
【選評】海東 貴利(高島市立安曇小学校)
「上着着て」という言葉は、厳しい残暑が和らいだ日、外へ元気よく駆け出そうとしたときにおうちの中から聞こえてきた家族の声だったのでしょうか。余計なお世話と表した言葉は、お節介な気持ちを表したはずなのに、ほのぼのとした温かい家族の雰囲気を感じることができます。また、上五と下五を「きて」と韻を踏むことによって、とてもリズミカルに読める作品に仕上がっています。和輝さんの巧みな言葉選びが光る俳句です。